愛されプリンス½
「っわ、」
トン、と肩と肩がぶつかる。
私にはぜんぜん視線をくれないくせに。
肩を抱く手は…優しい。
さっきみたいに、こわくない。
「…いや、違うか」
私の肩を抱いたまま、天王子が独り言みたいに、ボソッと呟いた。
「…わけわかんねーのは俺だ…」
「え?何が?」
「…うるっせぇ」
やっと私を見た天王子が、物凄く深い皺を眉間に寄せて、至近距離から私を睨みつけた。
「お前は黙れ一切喋んな」
「はっ…」
「イラつくんだよお前」
「なっ…」
「いちいち雷なんかにビビんじゃねーよ」
ギュ、と天王子の手に力がこもる。
「俺がずっと傍にいてやるから」
…ずるい。ずるすぎる。
天王子のくせに。
ちょっとドキッとしてしまった。
それから天王子は急に喋らなくなって、何か考え事をするようにまたボーッとしてる。
私も“一切喋んな”と言われてしまったのでだんまりだ。
どこかでまた雷が鳴っている。打ち付ける雨もますます強くなってきたようだ。
…だけど全然こわいと思わないのは、悔しいけど隣にいるこいつのせい。
私のことなんて。
ブスで村人Eでお子様ボディだとか言うくせに。
思いっきり見下してるくせに。
そして私は、こいつが嫌いなはずなのに。
…何でこんなに、安心するんだろう。
何で天王子は、ずっと傍にいてくれるなんて言うんだろう。