愛されプリンス½
天王子の表情が固まる。
“あ”の形に口が開いた。
そのときディフェンスがすかさずボールを奪おうとしてきて、少し体勢を崩した天王子の右足からシュートが放たれた。
大きく弧を描いたボールは、勢いよくクロスバーに当たりそのままあさっての方へ飛んでいく。
「あ~っ…」
女子のギャラリーから漏れる落胆の声。
「惜しかったね~」
「ていうか珍しくない!?プリンスがシュート外すなんて」
「ね!いつも百発百中なのに」
…ふ~ん。そんなにすごいんだ。じゃぁ逆に今は貴重な瞬間だったってこと?
ドンマ~イ!!という女子の大声援を受け、プリンスが「ありがとう」と上品な笑みで手を振っている。
さっき一瞬目があった気がしたけど…
気のせい、かな。
「ほらもう行こ。自販機行く時間なくなる」
「え~もうちょっとぉ~」
グズるみのりを引っ張って窓から離れた。
“俺がずっと傍にいてやるから”
…やだな。
なんか天王子を見ると、この間の夜のことを思い出しちゃう。
柄にもなくちょっと…ちょ~っと、優しかったから。
……天王子のくせに。