愛されプリンス½
「今回だって樹くんが助けてくれなかったらどうなってたことか」
「っごめん、俺がもっと早く出て行ってれば、一花ちゃんあんなことされなかったのに」
はぁっと今にも頭を抱えだしそうな勢いの樹くん。
だめだ…負のループに陥っている。
私は足を止めて、樹くんの腕をつかんだ。
樹くんが驚いたように目を瞠る。
「樹くん…もう自分を責めるの禁止!
むしろ、助けてくれてありがとう。樹くん、すっごくかっこよかった!」
まっすぐ見つめて言うと、樹くんは呆気にとられたような顔をして、それからなぜか少し頬を赤く染めて、私から視線を逸らした。
「? どうしたの?」
「いや…手…」
はっと気づいて慌てて手を離す。
そっか、好きでもない女に勝手に腕つかまれて、いい気分はしないよね!?
「ご、ごめん!私ったらまた無神経な…!」
「いや、違う。そうじゃなくて…」
樹くんはガリガリ頭をかくと、ぎゅ、と唇をかんで私の手をつかみ、引き寄せた。
さっきまで空いていた人ひとり分の距離が、なくなる。
「一花ちゃんこそ。すごいかっこよかった。ジャガイモは笑ったけど」
「い、いや…あれはつい…誰かさんを思い出してしまって」
「惚れ直した」
「惚れ…」
は!?
樹くんが私から手を離して歩き出す。
い…いやいや、なんかサラーッと、今なんか、言ってました、よね?