愛されプリンス½
「おっっせぇ」
焼きそばパンを持って屋上に現れた私に、天王子は不機嫌そうに眉をひそめた。
ベンチに偉そうにふんぞり返って座っている。
珍しく水川の姿はない。一人のようだ。
「おっっせぇって…それがパシッた人にとる態度!?」
ベンチに近づき、ん!と焼きそばパンが入ったビニール袋を突き出すと、天王子が手を伸ばして…
焼きそばパンではなく、なぜか私の手首をつかむと、勢いよく引っ張った。
「わっ…!」
引っ張られるまま、ベンチに座る天王子の上に倒れ込む私。
「ちょっと、何…!」
慌てて離れようとしたけど、ギュッ、と背中にまわった腕に阻止された。
まさか学校でハグされるとは思わなくて、ドコドコと心臓が変な音をたてる。
「何してんの…!?」
「何ってハグだけど。昨日すんの忘れてたから」
まるで当然のことのようにそう言う天王子の声が、頭のすぐ上で聞こえる。
少しして、ゆっくりと体が離された。
「…学校で急に、やめてよね…!」
今度こそ離れようとした。だけど、
「……ちょっ、」
もう一度腕をとられて、胸の中にとじこめられた。