愛されプリンス½
その声に、弾かれたように顔をあげたのはプリンスだった。
形の良い二重の瞳が、大きく見開かれる。
私も天王子の視線を追って顔を上げた。
屋上の入り口に立って、こっちを見つめている女の子。
制服ではなく、かわいいピンクのワンピースを着ている。
知り合い?と天王子に聞こうとして、思わず口をつぐんだ。
だってあまりも、その瞳が切なそうに揺れていたから。
「……妃芽…?」
天王子の僅かに震えた唇から、掠れた声が漏れる。
「玲!」
女の子が天王子に駆け寄る。
パッチリ二重の大きな瞳に長い睫毛、茶色くて猫毛の柔らかそうな髪の毛、ぷっくりピンクの唇…
まるでお人形さんみたいに可愛い子。
…なんか、どっかで見たような気が…
天王子の前に立ち、ウルウルと潤んだ瞳でじっと見つめている女の子。
…あ、思い出した!
この子、樹くんと買い物しているとき、チャラ男たちに絡まれていた子だ!
でも何でこんな所に?天王子の知り合い…?
「…ごめん、玲」
女の子…妃芽ちゃんの声は苦しそうで、絞り出すような声だった。
「ごめんね、玲…」