愛されプリンス½
「……何でここに」
天王子の声もどこか苦しそう。
二人の間に立ち込める空気は重い。
…私でも分かる。この二人が、ただの知り合いじゃないって…。
「…実は私、この学校に転入してきたの。どうしても玲に、もう一度会いたくて」
「……っ」
大きく見開かれる天王子の瞳。
「本当は明日からで、今日は挨拶だけの予定だったんだけど。少しでも早く会いたくて…開人に聞いたら、屋上だって教えてくれて」
…水川とも知り合いなんだ…。
天王子は黙ったまま。
大きな瞳いっぱいに涙をためた妃芽ちゃんが、我慢がきかなくなったみたいに天王子に手を伸ばした。
「玲っ、会いたかっ…「触んな!」
ビリッと空気がひりついた。
妃芽ちゃんがビクッと肩を揺らして、慌てて手をひっこめる。
「…ご、ごめん…」
「………」
俯いたままの天王子。
びっ…くり、した。
あんな切羽詰まった天王子の声、はじめて聞いた…。
そこで初めて、妃芽ちゃんが私の存在に気付いた。
パチリ、と瞬きをひとつする。
「あれ…あなた、もしかして…こないだ助けてくれた人…?」
「あ、はい…やっぱりそう、ですよね」
「びっくり。この間は本当にありがとうございました…!あの時一緒にいた男の子もこの学校?」
「あ、いや、樹く…彼は、違う学校で」
その時突然、天王子が踵を返し屋上のドアに向かって歩き始めた。
慌てて妃芽ちゃんもその後を追う。
「玲っ待って!」
二人の背中はあっという間に、ドアの向こうに消えた。