愛されプリンス½
「て、天王子」
「…昨日俺に“大っ嫌い”とか言ったよな?」
完璧な笑顔のまま、私だけに聞こえる低い声で言う天王子。
「そのくせに俺を呼び出すとか、お前何様…「玲っ!」
天王子を遮って、妃芽ちゃんが天王子の前に飛び出した。
ス、と天王子から猫かぶり笑顔が消える。
「…妃芽」
「私が村田さんに玲を呼んで欲しいってお願いしたの。私、どうしても玲とちゃんと話したくて…」
「…今更だろ」
天王子の口角が不自然に歪む。
「今更何話すっていうんだよ」
そしてフイッと妃芽ちゃんから視線を逸らすと、私たちに背を向け歩いていった。
「待って…玲っ…!」
その後を追う妃芽ちゃん。
天王子の背中が、妃芽ちゃんを拒絶してる。
いや…早足で余裕なく歩いていく天王子は、なんだか逃げているようにも見えた。
学校では常に猫かぶり愛され笑顔の天王子。
そんな天王子の鉄の仮面が、一瞬で剥がれた。
「…水川」
ん?と笑顔で二人の背中を見送っていた水川が、私を振り向く。
「天王子と妃芽ちゃんって、どういう関係なの…?」