愛されプリンス½
余裕のない天王子の声に、ドクッと心臓が跳ねた。
…いや、落ち着け私!
天王子、前に言ってたじゃん。
私のこと、“俺の女アレルギーを直すための道具。つまり所有物”って!
「…私は物じゃない!」
渾身の力で、なんとか天王子の腕の中から逃れた。
もう、天王子には騙されない。ドキドキなんてしないんだから!
…だけど天王子は黙ったまま。じっと私を見つめてる。
すぐに何か言い返してくると思ったのに。
…何で。
何でそんな切なそうな目で見るの…?
「ご飯できたわよ~♡」
その時ガチャリとドアが開いて、お母さんが顔を出した。
無言のまま向かい合う私たちに異様な雰囲気を感じたのか、不思議そうに私たちを見比べる。
「…あら?もしかしてお邪魔だったかしら…?♡」
そして絶対変な方向に勘違いしている。
「いや全然?今日のご飯何?」
私は天王子の横をすり抜けて部屋を出た。
「今日は海老チリよ~♡たまには中華もいいでしょ?玲くんも、中華好き?♡」
「………」
黙ったままの天王子。
「玲くん?」
「…すみません、麻美さん。俺ちょっと急用思い出して、今日は帰ります」
「えっ…」
天王子は軽くお母さんに会釈すると、私とは目を合わせないまま、あっという間に出て行った。
「…玲くんどうかしたのかしら?」
「………さぁ」
…何あいつ。
あいつが何か言い返してこないと、こっちも調子狂うんだけど…。