愛されプリンス½
天王子から視線を逸らして、私の立つ校門付近を確認したが、私の待つ人物の姿はまだなかった。
実は今日はこの後、樹くんと待ち合わせしている。
また偶然、この近くに用事があるらしく、その後に寄ってくれるらしい。
なんでも今回は、樹くんに行きたいカフェがあるみたいで。
…前髪とか、変じゃないよね。
急にソワソワしてきて、私はポケットから手鏡を取り出し前髪を確認。ついでに、歯に何か挟まっていないかも確認。
特に問題はない、が…いや、ある。唇がカサカサ!
慌ててワイシャツの胸ポケットからリップを取り出した。
桃のかおりがする色付きリップ。
それを丁寧に塗っていると、
「一花ちゃん」
背後から落ち着いた声がかかった。
風のようなスピードでリップと手鏡をポケットに突っ込む。
「いっ樹くん!」
「ごめんね、待った?」
「ううん、全然!」
「そっか、よかった」
樹くんが穏やかに微笑む。
「じゃ、行こっか」
「うん」
他校の制服の樹くんは、当然ながら生徒の注目を浴びていた。
もしかして、付き合ってるとか思われてるのかな…?
私だって、男女が一緒に帰っているのだけでも、付き合ってるのかなと思うし。
そう思うと再びソワソワが押し寄せてきた。なんだかくすぐったい。
校門を出て、樹くんと並んで歩く。
自転車の生徒が何人か隣をすり抜けていく。
中にはわざわざ振り返って樹くんに好奇の視線を浴びせる人もいた。
樹くんが少し照れくさそうに私を見て、私も微笑み返した。そのとき
「村田さん」