愛されプリンス½
背後から聞こえた落ち着いた声。落ち着きすぎて、逆に不気味なくらい…。
恐る恐る振り向くと、穏やかな笑みをたたえた天王子が立っていた。
さっきまで女子たちと楽しく話してたくせに、いつの間に…!
天王子がゆったりとした足取りで近づいてくる。
すぐにそんな天王子の後ろから「玲っ!待ってってば!」と妃芽ちゃんが追いかけてきた。
だけど天王子はそんな妃芽ちゃんの声などまるで聞こえていないかのように、私だけを視線に映す。
「どこ行くの?」
プリンスモードの天王子が完璧な感じの良い笑みで聞いてくる。
こんなやり取り、つい最近もしたような…。
デジャヴを感じながらも、「カフェだけど」と返した。
妃芽ちゃんが私と天王子を交互に見比べている。
「行かないで」
天王子が笑顔を崩さないまま言った。
…えっと…
「は?」
意味が分かんないんだけど…。
天王子がさらに距離を詰めてくる。
真上から私を見下ろす瞳から、スッと柔らかさが消えた。
「だから行くなって言ってんだよ」