愛されプリンス½




妃芽ちゃんが驚いたように目を見開いた。


隣で樹くんも息をのんだのが分かる。



何を考えているのか、天王子が突然かぶっていた猫を脱ぎ捨てて、怒りと苛立ちを宿した瞳に私を映している。


こんなところでまさか素を出してくるとは思わなくて一瞬怯んだけど、なんとか態勢を立て直した。



「何でそんなことあんたに命令されなきゃいけないの?」


「俺のだから。お前は」


「っだから!私は物じゃないから!」


「…別に物だとは思ってねーよ」



なぜか苦し気に眉をひそめた天王子が、私の二の腕あたりをつかむ。



「じゃぁ何て言えばいいわけ?」


「は…」



そんなのこっちが聞きたい。


あんたは一体、何が言いたいんだ。




黙ったまま私を見る天王子と視線が交差する。




…何でそんなに苦しそうなの。




「…ちょっと」



天王子の手を私から引き離したのは、樹くんだった。



天王子の熱が私から離れるのと同時に、ハッと意識を引き戻される。




…そうだった。私は樹くんとカフェに行く途中で。




「…もう一度聞くけど」



樹くんがチラ、と私を見てから、天王子に真っすぐ体を向ける。



「天王子くんは、一花ちゃんのことが好きなの?」





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