愛されプリンス½
チッと天王子が口の中で舌打ちをした。
対峙するように、鋭い瞳を樹くんに向ける。
「別に好きじゃねーよ。しつけぇな」
「じゃぁ、何でここまで一花ちゃんに執着するのかな」
「…は?」
「好きじゃなければ別に、一花ちゃんが誰とどこに行こうが、どうだっていいでしょ?」
「…どうだっていい。でも」
天王子が忌々しそうに頬をひきつらせる。
「俺が気にくわない。こいつがお前のためにリップ塗り直してたり、はにかみあってたり、すっげームカつく。生意気なんだよ、たかだか村人Eが」
「なっ…」
思わず応戦しそうになった。
なぜ!?リップ塗り直しているだけで生意気なんて言われないといけない!?ていうか見てたわけ!?ファンの女子たちと楽しくご歓談中だったくせに!!
だけどそんな私を制するように、樹くんが少し前に出る。
「俺にはつまり“好き”だって聞こえるんだけど」
「…お前耳わりぃんじゃねーの。頭も」
「何でそこまで否定すんの?」
樹くんの静かな声に、天王子は不愉快そうに、今度はハッキリと舌打ちをした。
「くだんねーから。恋とか愛とか好きだとか、俺は信じない」
「…そっか。人の価値観に異議を唱えるつもりはないよ。でも、だったら一花ちゃんは俺がもらう」
樹くんがはっきり言い放つ。
「同じ土俵に立ちもしない奴が邪魔すんなよ」