愛されプリンス½
天王子と樹くんが睨み合う。
まるでバチバチと火花の散る音が聞こえてきそうな勢いだ。
「あ、あの、樹く…」
ていうか樹くんは何か盛大な勘違いをしているような気がする。
そう思って樹くんに声をかけようとしたけど、なぜか天王子にギロリと睨まれ、ひっと喉の奥で小さく悲鳴をあげた。
何!?何で私がそんなに恐ろしい形相で睨みつけられなきゃいけないの!?
そんな疑問を口にする前に、パシッと樹くんに腕をとられ、視界が反転する。
あっという間に天王子は消えて、かわりに目の前には、私の腕を強く引っ張る樹くんの背中。
「樹くん…?」
何か、怒ってる…?
「あ、あの、樹くんは多分、勘違いしてると思う!アイツが私なんかのこと、好きになるわけないじゃん?」
「…そうかな?」
樹くんは振り向かない。
足のスピードも一向に緩める気配はない。私は少し小走りのような状態でそれについていく。
「そうだよ!アイツも言ってたけど、アイツはただ私が、男子と出かけたりしてるのが気にくわないんだよ。私のこと見下してるから!ほんっと、自分がちょっとかなり死ぬほどモテるからって、嫌な奴だよねー」
ピタ、と樹くんが急に足を止めた。
私も慌ててブレーキをかける。
つんのめりそうになった私を、樹くんがじっと見つめていた。
「…本当に、それだけだと思ってる?」
「…え?う、うん…?」
樹くんのメガネの奥の瞳は、まるで私を見透かそうとしているような、観察するような瞳だった。
なんだか居心地が悪くて首をすくませた私に、はっと息を吐き出すようにして笑う樹くん。
「な、何かおかしい…?」
「…いや」
樹くんが私の手を握り直す。今度はゆっくりと、歩き始めた。
「似た者同士なのかなと思ってさ」