愛されプリンス½
「…っ待って」
天王子の胸に手を置いて、距離を取る。
天王子が面食らったように怪訝な顔をした。
「何だよ」
…応援するっていうのが、具体的に何をすればいいのかは、よく分からないけど。でも。
「…もうこういうのやめよう」
こうして抱き合うのはきっと、“応援”という言葉とは真反対にいる。例えそこに、特別な感情は何もなくても。
「……何で」
天王子の声は感情のこもっていない、棒読みの声だった。
だけど目は、分かりやすく不機嫌に歪められている。
「何でって…。なんか、違う気がする」
「は?今更何言ってんだよ」
「とにかく、もうハグはしない!」
私の宣言に、天王子が暫し黙った。だけど
「無理」
そうはっきり言ってから、改めて私の肩を引き寄せてくる。
「ちょっと待ってってば!だってもう私じゃなくてもいいでしょ!?」
私は必死に抵抗して何とかその腕から逃れようとする。
「妃芽ちゃんがいるじゃん!」
瞬間、ピタリと天王子の動きが止まった。
同時に、立ち上る何かドス黒いもの。
「………は?」
真っ黒いオーラを纏った天王子の声は、ゾクリとするほど冷たかった。