愛されプリンス½
「…わ、私だってムカついてるし!」
ていうか何で押し倒されてんの!?!?
正直気が動転しまくっていて、そう言い返す声がわずかに震えてしまった。
それを悟られまいとキッと天王子を睨む目に力をこめる。
チッ。
天王子がさも気にくわない、とでも言いたげな舌打ちをした。
「…お前って、いつもそういう目で俺を見るよな」
私の右手首を布団に縫い付けていた手が離れて、そっと親指で、唇に触れてくる。
「…泣き顔とか、見てみてぇんだけど」
…なにこれ。
天王子の親指が、私の唇を撫でる。
不機嫌そうな瞳とは裏腹に、その手つきは優しい。
まるで壊れ物に触れるように、なにかを慈しむように、触れる。
…なにこれ。
ドコ、ドコ、と内側から乱暴に私を叩くのは、まぎれもなく、私自身の心臓だ。
このおかしなムードに、おかしくなりそう。
強くつかまれた左手首の感触に、私を射抜く目に、下唇を撫でる手つきに、暴れる心臓に。
―――飲み込まれそう。
「なっ…
泣かされたら、泣かし返す!!」
喝を入れるべくそう叫ぶと、ふっと天王子の、唇に触れていた手の動きが止まった。