愛されプリンス½
だけど妃芽ちゃんは立ち上がったまま、何も答えようとしない。
「春野、159ページ、6行目からだ」
指示が聞こえなかったのだと判断した先生がもう一度指示を出す。
だけど妃芽ちゃんはじっと黙りこくったまま。
「…妃、」
呼びかけようとして、気付いてしまった。
妃芽ちゃんの教科書が、真っ黒く塗り潰されていることに。
これって…
辺りを見渡すと、怪訝そうにこちらを窺う生徒に混じって、チラホラ、クスリと笑顔を漏らす女子がいた。
…プリンスの、ファンクラブの人たちだ。
そこでタイミングよくチャイムが鳴って、先生は不思議そうな顔をしながらも
「じゃぁ次は同じとこからまたやるから!日直号令~」
次を急いでいたらしい。日直の号令が終わるやいなやそそくさと教室を出ていった。
妃芽ちゃんも、駆け足で教室を出ていく。
「…っ妃芽ちゃん!」