愛されプリンス½
ていうか…
「天王子、私のこと今“一花”って「で、何でこんな所で寝てたんだよ」
私を遮って立ち上がる天王子。
腕組をして、偉そうに見下ろしてきた。
見下ろされるのが何だか気にくわなくて、私も立ち上がる。
「天王子のこと待ってた」
「…は?」
「だって教室でも家でも居留守使うし。こうなったら帰宅したところを取り押さえるしかないと思って!」
グッと力強く拳を作って言った私に、眉をひそめる天王子。
「……お前、言ってること違くね?」
「え?」
「先に関わらないって言ったのはそっちだろ。簡単に覆してんじゃねーよ」
そしてどけ、と私を押しのけ、ドアの鍵穴に鍵を差し込む。
…たしかにそうだけど。
でも、妃芽ちゃんを助けられるのは
「天王子じゃないとダメなの」
「………」
天王子が振り向く。
その瞳が僅かに見開かれている。
「だから…お願い。話、聞いてほしい」
天王子は少しの沈黙のあと、は、と息を吐くように笑った。
諦めたような、呆れたような。
「断る」
「な…」
「俺も、正直もうお前とは関わりたくねーんだわ。
お前といると調子狂うしイライラするし、いいことねぇから。
俺は…完璧じゃないといけない。完璧じゃないのは俺じゃないから」
ニッコリ、天王子が笑顔を作る。
360度完璧な。
誰からも愛される、愛されプリンスの微笑みだ。
「じゃぁね。村田さん?」
パタン、と静かに扉がしまる。
ガチャン、とチェーンをかける音が、やけに大きく耳に残った。