愛されプリンス½




「うぅ~ん…」


「……どうした村田?具合でも悪いのか?」



数学の授業中、頭を抱える私に先生が声をかけてきた。



「いや…大丈夫です」



体調が悪いわけでもなく、かといって数学の問題に頭を悩ませているわけでもなく。



私が悩んでいるのは全く別のこと。




なぜか最近常に一日中寝ても覚めても、ずっとモヤモヤしてしまう。



理由は分からない。


でもいつからかは分かってる。




あの体育の日からだ。




あの体育の日から、妃芽ちゃんへの嫌がらせはパッタリとなくなった。



喜ばしいことだ。



私が天王子にわざわざ言わずとも、めでたく問題解決、だ。



それなのに。




…あー…すっきりしなくて気持ち悪い…。




「そうか」



悩める女子高生の言葉にならない感情を理解してくれたのか、先生が深く頷いた。



「じゃぁ問3の(2)解いてみろ」


「え…は?」


「黒板使っていいぞ」


「えー…」




最悪。


こんなことなら具合悪いって言って保健室にでも行けばよかった。




目の前には真っ白なノート。




今日の数学の授業が開始してからもう40分は経っているらしいけど、モヤモヤするのに忙しくて全く聞いてなかった。





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