愛されプリンス½
23♡ブラックコーヒー×角砂糖
焼きそばパン。
なんてもの売ってるんだこのカフェは。
放課後、樹くんとやって来たオシャレカフェで遭遇したソレ。
奴と出会う前だったら何も思うことなく素通りしてたであろうソレ。
「……………」
「…一花ちゃん?」
メニューを開いたまま固まっている私を不審に思ったらしい。正面の席に座る樹くんが控えめに声をかけてきた。
「…あ、ごめん。えっと、コーラフロートと…ショートケーキで」
「わかった」
頷いた樹くんが店員さんを呼び止めて、スムーズにオーダーを済ませてくれる。
ついでに私の手からメニューも回収して、机の隅にきちんと立てかけた。
「ずいぶん悩んでたね」
メガネの奥の瞳を樹くんが僅かに細める。
「う、うん…食べたいもの沢山あったから迷っちゃった」
まさか焼きそばパン以外のメニューなんてほとんど見ていなかったとは言えない。
「樹くんはコーヒーだけで平気なの?」
「うん。俺、コーヒーが一番好きだから。ここ美味しいって有名だから、前から来てみたかったんだ」
「そうなんだ」
大人だなぁ、樹くん。
先に運ばれてきていた水を口に運びながらそんなことを思う。
私はコーヒーは苦くて苦手。甘いジュースが好きだ。