愛されプリンス½
「えっ?」
妃芽ちゃんの顔がほんのりピンクに染まった。
「そんな…私たちはまだそんなんじゃないよ~!ね、玲?」
「……」
天王子を見ると、なぜか妃芽ちゃんではなくじっと私を見ている。
…微かに眉間に皺を寄せて。
先に視線を逸らしたのは私だった。
な、何?何でそんなに見るの!?
「お待たせしました~」
少しして、天王子の頼んだ焼きそばパンと、妃芽ちゃんの頼んだブラックコーヒーが運ばれてきた。
妃芽ちゃんがブラックコーヒーを飲むのは少し意外だ。
甘いカフェオレとかのイメージだった。
「これ」
天王子が机の上にあった角砂糖の入れ物を妃芽ちゃんの方に滑らせる。
「どーせ入れるんだろ?」
「もちろんっ。さすが玲だね」
「はじめっからカフェオレ頼めばいいのに…」
「だからっ!前から言ってるけどカフェオレとブラックコーヒー砂糖入りは全くの別物だから!!」
よくわかんね、と天王子がフッと笑う。
妃芽ちゃんがそれにまた言い返す。
…天王子、妃芽ちゃんのことよく知ってるんだね。
なんだか二人を見てると、“線”が見える。
私と二人の間にある、実際にはないけど、確かにある“線”。
私が絶対に入り込めない、二人だけの世界。