愛されプリンス½
昼休みはいつも妃芽と二人で、誰もいない多目的教室を貸し切って食べていた。
「ね、見て~!タコさんウインナー、うまく出来たんだぁ~」
「…ふーん」
妃芽は最近料理にハマっているらしい。
俺の昼食を見てわざとらしく膨れてみせた。
「また焼きそばパン?毎日それじゃ体に良くないよ~」
「…別に、大丈夫だよ」
お母さんは仕事で朝も夜もバタバタだから、俺の家には弁当という習慣がなかった。
「もうっ、私がお弁当作ってきてあげるっていつも言ってるのに」
「…いいって」
…お母さん以外の手料理は昔から苦手だ。
断ると、バンッ!と叩きつけるように箸を置く妃芽。
「何でそんなに冷たいの?玲、私のことほんとに好きなの!?」
「…は?」
いや何で急にそうなる?
呆気にとられる俺の前で、妃芽は泣きそうな顔をしてみせる。
…え、泣くの?マジで?
「だってっ…キス、も、してくれないし…っ」
…まただ。
グラリと視界が揺れる感覚。
…何でそんなキスしてーんだよ。