愛されプリンス½



「え?なにが?」


「いやとぼけないでよ…」


「そんなことどっちでもよくない?」



水川がバナナの皮を窓から放り投げた。



そしてポケットから水色のハンカチを取り出す。



え…水川ハンカチ持ってるんだ…負けた。なんて密かにショックを受ける私に、それを差し出す水川。




「…ん?」



首をかしげると、水川が「はは、一花ちゃんって頭悪いよね~」とサラッと毒舌攻撃をしかけてきた。



「拭けば?泣きそうな顔してる」


「え…?」



そのときはじめて気づいた。


目から零れる、生温かい液体に。




…私ってカフェのときもそうだったけど、何で泣いてるのにいつも気付かないんだろう…。



手で拭おうとすると、「いや俺のハンカチの意味ー」と水川が笑った。




「だ、だってハンカチ、汚れちゃうし…」



「バカじゃん?俺のハンカチって女の子の涙を拭くためにあるんだけど」




どこかで使い回されているようなキザったらしいセリフを吐く水川。




だけど今は、それにさえ、涙が止まらなくなる。





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