愛されプリンス½
4♡学校では猫をかぶって接しましょう
「ふぁぁぁぁ~…」
「…でっかい欠伸」
廊下を歩きながら大欠伸をした私に、隣を歩くみのりが怪訝な顔をした。
今は、二時間目と三時間目の間の、10分休憩。
次の選択授業で音楽を選択している私たちは、音楽室に移動中だ。
「いや…なんか最近寝不足で」
ふぁぁ、と二発目の欠伸をしながらそう言えば、みのりが「何で?」と間髪入れず聞いてきた。
「何で、って…」
全ての原因はあの変態自己中俺様プリンス、天王子にある。
天王子の女アレルギー克服に協力することになってしまってから一週間。
天王子は毎晩、うちに夕飯を食べに来て、その後私をハグして帰る。
あれで本当に女アレルギーが克服出来るのかは謎だが、天王子は“とにかく女に触れるのに慣れることが重要だ”とか言っている。
何の気持ちも思い入れもない、業務的なハグだ。
でも、どうやら彼氏いない歴16年の私には刺激が強すぎるらしい。
眠る間際になって思い出してしまうのだ。
ギュッと背中を抱き寄せられる感触とか、天王子の温度とか、ふわっとほのかに香る甘い匂いとか。
そういうのが目を瞑ると全て、妙に生々しく、思い出されてしまって。
…眠れなくなってしまうのだ。