愛されプリンス½
「……ちょっと最近読書にハマっててさ!」
「は?嘘。一花、本とか全然読まないじゃん」
だけどプリンスとのアレコレは絶対に言えないので慌ててそう誤魔化すと、瞬時に嘘と見破られた。
って、もしかして嘘下手すぎるのか?私。
「あ、えーと、それよりさぁ~…」
どうにか話題を変えなければと頭をフル回転させていると、「キャァ~ッ!」という甲高い悲鳴。
何だ事件か!?と身構えた瞬間、前方から廊下の角を曲がってやってきた人影。
嫌味なくらい長い足。驚くほど小さな顔。
口元には常に穏やかな笑みを浮かべ、周囲の女子全員の視線を独り占めしているその男。
―――そう、この学園の絶対的プリンスにして、私の寝不足の原因だ。
「うそっ、やだっ、プリンスじゃんっ」
隣のみのりも興奮気味。
ゾロゾロと何十人もの女子を引き連れ歩いている天王子が、段々と近づいてくる。
これが噂の…参勤交代……!
隙のない笑顔を女子に振りまくプリンスに、私は内心でケッと悪態をついた。
ほんとはただの自己中俺様男のくせに…!
私に気付いた天王子と視線が交わる。
だけどそれは一瞬のことで、すぐに逸らされた。まるで何も見なかったみたいに。
「ちょっと一花!プリンスの邪魔だからっ!」
突っ立ったままの私をみのりが廊下の隅に引っ張る。その瞬間だった。
「あっれ~君ってこないだの…ビンタガール!!」