愛されプリンス½





「あー…つかれるわ」



ため息をつく天王子。



「水川ってなんか読めないよね。いつも違う女子と電話してるけど彼女とかいないの?」


「さぁ?特定の女はいないんじゃね」


「好きな人は?」


「さぁ…アイツが恋、とか想像できないけど。昔からあんな感じだし」


「ふーん…じゃぁさ、どんな人がタイプ…」


「お前」



天王子が私の頬をグイッとつまんで引っ張った。



「痛!」


「なんなの?開人のことがそんなに気になる?」


「はぁ?」


「俺という男がいながら…」




不機嫌そうに唇をゆがめた天王子が




「…んっ」




少し乱暴なキスをする。





「……こ、公共の場でなんてことを…」


「お前のせいだろ」




すぐに唇ははなれて、コツ、とおでこがぶつかった。




「…なーんかムカつくなー」


「…え?」


「俺ばっか…余裕ない」




そのまま強く抱きしめられる。




もしかして天王子…ヤキモチやいてるの?




「……天下の愛されプリンスのくせに…」


「うるせー村人E」


「私だって余裕ないよ?」




いつも天王子にドキドキさせられて、心臓を酷使している気がする。早死にしないか心配だ。




ゆっくり天王子の背に手をまわすと、一瞬ビクッと体を震わせた天王子が、抱きしめる手に力をこめた。



やばい。苦しい。苦しいけど



幸せかも…。





目を閉じる。



チャイムの音がいつもよりも遠くから聞こえる気がする。




だけどあまりに居心地がよくて、私たちはもうしばらく、そのままでいた。




< 414 / 420 >

この作品をシェア

pagetop