愛されプリンス½
「あー…つかれるわ」
ため息をつく天王子。
「水川ってなんか読めないよね。いつも違う女子と電話してるけど彼女とかいないの?」
「さぁ?特定の女はいないんじゃね」
「好きな人は?」
「さぁ…アイツが恋、とか想像できないけど。昔からあんな感じだし」
「ふーん…じゃぁさ、どんな人がタイプ…」
「お前」
天王子が私の頬をグイッとつまんで引っ張った。
「痛!」
「なんなの?開人のことがそんなに気になる?」
「はぁ?」
「俺という男がいながら…」
不機嫌そうに唇をゆがめた天王子が
「…んっ」
少し乱暴なキスをする。
「……こ、公共の場でなんてことを…」
「お前のせいだろ」
すぐに唇ははなれて、コツ、とおでこがぶつかった。
「…なーんかムカつくなー」
「…え?」
「俺ばっか…余裕ない」
そのまま強く抱きしめられる。
もしかして天王子…ヤキモチやいてるの?
「……天下の愛されプリンスのくせに…」
「うるせー村人E」
「私だって余裕ないよ?」
いつも天王子にドキドキさせられて、心臓を酷使している気がする。早死にしないか心配だ。
ゆっくり天王子の背に手をまわすと、一瞬ビクッと体を震わせた天王子が、抱きしめる手に力をこめた。
やばい。苦しい。苦しいけど
幸せかも…。
目を閉じる。
チャイムの音がいつもよりも遠くから聞こえる気がする。
だけどあまりに居心地がよくて、私たちはもうしばらく、そのままでいた。