愛されプリンス½
「…ムカつく」
そんな私の悪態をかき消すみたいに、ギュッと抱きしめる腕に力がこもる。
「うるせー、黙れ」
…まただ。
この偉そうな口ぶりに似合わない、甘やかすような甘い匂い。
私は天王子が嫌いだ。
毒舌で自己中で偉そうで、すぐ人を見下すし人の弱みに付け込んで脅すし。
だけどこの匂いは好き…かもしれない。不覚だけど。
何の香水つけてるんだろう…。
「あ、そうだ。お前今度の土曜空けとけ」
私を抱きしめたまま、思い出したように天王子が言った。
「は?土曜?何で?」
「デートしようぜ」
「は…」
デートって。デートってあの恋人同士がよくするアレ…だよね!?
「なっ…何で私があんたとそんなことっ…!」
「うるさ。喚くな」
天王子が鬱陶しそうに私の両肩をつかんで体を離す。
「俺今まで女と二人きりで出かけたことねーし、女アレルギー克服の手掛かりになるかもしれねー。どうせ暇だろ?」
「どうせ暇って…失礼な!」
暇だけど!
「じゃぁ決まりな」
まだ行くか行かないかも言っていないのに、勝手に話をまとめた天王子が部屋のドアに手をかけた。
「ちょっ、待って!じゃぁせめてデートって言うのやめない!?なんか語弊が…!」
「あ?うるせーな。この俺様とデート出来るなんて光栄なことだろうが。しのごの言うんじゃねー」
フッとバカにしたように唇を歪めた天王子は、それだけ言い捨てて部屋を出て行った。
なんかアイツって…ほんとに…何様!?