愛されプリンス½
小うるさい天王子にようやく合格をもらったのは、黒地に白いドット柄のレトロなワンピース。
右手に持った紙袋には、さっきまで私が着ていた変装コーデが入っている。
「何も着たまま帰らなくても…」
「うっせーな、これ以上あんな泥棒女と歩きたくねーんだよ」
「泥棒とは失礼な!」
「つーか」
ふと足を止めた天王子が、隣を歩く私をギロリと睨む。
「何でまだサングラスとマスクしてんだよ」
「だってこれがないと見られたとき困るし」
「だから気にすんなっつっただろーが」
天王子が腕を伸ばして、その長い指でサングラスとマスクを乱暴にはがした。
「ちょっと!返してよ!」
「やだね」
「なんっ…」
取り返そうと伸ばした手を取られ、そのまま強引に繋がれる。
ギュ、と繋いだ手に力をこめられれば、そのままなす術がなくなってしまった。
「なんかまた顔赤くねー?」
「べっだっあっ赤くなんてなるわけないでしょぉ!?」
ダメだ。
男性経験皆無の私には手を繋ぐだけでやっぱり大事件で、ずっとサングラスをしていたからなのか、いつもよりも天王子がチカチカして見える。
どうやら目がイカれてしまっているらしい。