愛されプリンス½
「え、えと…そうです、けど…」
たどたどしく答えると、黒い巻き髪の先輩が一歩、距離をつめてきた。
「初めまして。私は九条佳蓮」
「はぁ…」
「プリンスファンクラブの会長よ」
「…は!?」
な、なんでこんな所にあの俺様毒舌クソ野郎プリンスのファンクラブ会長が。
面食らう私に、会長はしっとりした声で言った。
「土曜日、あなたがプリンスと歩いてたっていう目撃情報があるんだけど。それは本当かしら?」
…誰にも見られていないと安心したばかりだったのに。
「しかも手を繋いで…可愛らしいワンピースを着て歩いていたそうね」
ワンピース…ってことは天王子にマスクとサングラスを取られてからだ。
あんのくそ男…何が大丈夫だよ、
全然大丈夫じゃないじゃねぇかぁぁぁぁ!!
「本当かしら?」
会長がもう一度聞く。
その声からは怒りも憎しみも何も感じない。ただ静かで穏やかで。
そのかわり、絶対的な確信を感じた。
とても嘘をつける雰囲気じゃない。
「……本当です」
掠れた声で答えると、会長はニッコリと品の良い笑みを浮かべて。
「そう」
頷く。