愛されプリンス½
「聞きました。土曜日に、この子と二人で街を歩いてたって。一体どういうことですか!?」
「別に。ただ買い物に付き合ってもらってただけだけど?」
「そんなっ…この学園の子と二人で出かけるなんて…もっと自覚してください!あなたはこの学園のプリンスで、象徴的存在なんです!
あなたは誰も軽々しく近づけない存在。それがこの学園の秩序です!」
おー、なんかよく分かんないけどすごいこと言ってるよこの人…。
正直ドン引きする私。だが天王子は柔らかい笑顔を崩さないまま。
この学園の象徴とやらは、「九条さん」と優しい声で彼女の名を呼ぶ。
会長の頬がボッとピンクに染まったのが分かった。
「は、はい…なんですか」
「それがこの学園の秩序なら、もちろん俺が言った、学園から一歩外に出たら一切俺には干渉しない。
そのルールも当然分かってるはずだよね?」
う、と会長が言葉に詰まる。
優しい口調のまま続ける天王子。
「俺が外で誰と何しようが勝手でしょ?村田さんは俺の彼女でもなんでもないよ。
でも俺は、誰かが俺のせいで傷つく姿は絶対に見たくないんだ」
そんなキザなセリフを吐いて、天王子がゆっくりとした足取りで私の前に立つ。
まるで背中に私を隠すみたいに。
「だからもう、二度と彼女に構わないであげてくれる?」
天王子の声は優しくて柔らかくて、でもそこには有無を言わさない迫力があった。
悔しそうに会長が唇をかむ。そして
「っ分かりました…!」
ペコッと頭を下げると、パタパタと走り去っていった。先輩二人も慌ててその後を追う。
薄暗い中に、私と天王子、ふたりだけが取り残された。