わたしと先生。
そしてその機会は、案外すぐに訪れた。

「生物担当の、吉沢悟です。よろしくお願いします。」

「……うそ。」

探していた先生が、今、目の前にいる。
生物の教科担当。吉沢悟先生。

知りたかった名前を知ることができた。
接点も、持てた……。

心がギュっとする。
どうしよう、なんでだろう。すっごく嬉しい。

「さて、まず1年のカリキュラムから配りますね~。」

吉沢先生の話し方は見かけ通りおっとりで、でも先生って感じで。
生徒に好かれる先生、そんな感じだった。
現に今も、生徒と和気あいあいと話してるし。
若いのもあるのかな、いい先生って感じする……。

「さて、最後に。生物係を決めたいんですけど。誰か立候補しませんか?」

クラスがシーンっとする。

教科係はめんどうくさい。
頼まれごとがあれば手伝わなくちゃいけないし。
ノートを運んだりしなくちゃいけない。
他の係のほうが楽だから、立候補でなる人はほとんどいない。

先生が困ったように笑う。
眉を下げるその表情が、あの日の表情に重なる。

先生困ってる。
今度は、私が助ける番だよね。

おそるおそる手を挙げる。
先生のほうをちらっと見ると、先生も気づいたようで。
くしゃりと、目を細めて笑った。

うわ~、わああああ、なんだろう。
心臓ざわざわする。なんか、変。でも、いやじゃない。

「立候補ありがとうございます。名前教えてもらえますか?」

「た、小鳥遊ふゆです!」

「小鳥遊さんですね、1年よろしくお願いします。」

「は、はい!」

「では早速ですけど、授業が終わったらこれ生物準備室に持ってきてもらえますか?」

「はい!」
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