初恋は水中の彼
稲山スイミングスクール
稲山杏奈(いなやまあんな)は家から近い女子高に通う高校三年生
自宅で母親の経営するスイミングスクールの一人娘
通う高校には水泳部はなく、放課後まっすぐ家に帰りスクールで毎日泳ぐという生活が当たり前になっていた
夏休みも後半に入ったある日、杏奈がプールから上がると目の前に男の足があった
顔をあげると懐かしい顔があった
「譲(ゆずる)、どうしたの?」
「部活引退したからまた大学入るまで泳がせてもらおうと思って…」
「本当?」
「ああ、またよろしくな」
「うん!」
「杏奈〜、もう一本」
コーチから声がかかる
「じゃあ、明日な」
杏奈はコーチのところへ行きプールに入って泳ぐ
譲は三歳から同じ日にスクールに通いだした
週二回の練習日も一緒、進級テストも一緒に上がっていき選手コースに入ってからは放課後毎日一緒に泳いだ杏奈の初恋の男の子である
杏奈はプールからあがった
「杏奈、今考え事してたろ?もう一本」
コーチにはすべてお見通しだった
昼食を食べに隣接している家に杏奈は一度帰り母に話す
「譲に会ったよ」
「知ってるよ、挨拶にきたからね、部活引退して大学入るまで泳がせてくれって、ジムのほうは土日に時々きてたんだよ」
「知らなかった、辞めたのかと思ってた」
「あれ、お母さん杏奈にいってなかったっけ?」
「聞いてないよー」
「譲も言ってたけど大学……何校か推薦が来てるらしいけどあなたにも来てるわよ」
「推薦って大学で水泳部に入るってこと?」
「そうよ、まあ常に決勝には出てたからお誘いがきたと思うわ、オープンキャンパスにでも行ってみなさい、一度スクールから離れて見るのもいいかもしれない」
「はーい」
次の日
「おはよ、杏奈」
「おはよう、早いね」
「午前中泳いで、午後からジムにしようかなと思って……お前もだろ?」
「うん、そう、譲は大学決めたの?お母さんがオープンキャンパスに行ってみたらって昨日言われて、スクールから一度出て見るのもいいかもって」
「今週の土曜日に行くよ、一緒に行く?」
「いいの?」
「いいよ、午後からジムで話そうぜ」
「うん!」
二人は泳ぎに入った
午後になり二人はジムで筋トレをする
「これ、連絡先な」
二人は交換する
「土曜日、迎えにいくから家のほうで待ってろよ、9時にいくからな、制服で」
「制服なんだ」
「そうだよ」
制服は上半身がムチムチで嫌なんだよね、まあ水泳してるからしかたないんだけどさ、水着は恥ずかしくないのに制服のほうが恥ずかしいなー
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