初恋は水中の彼
二人は同じ大学を志願し、水泳の推薦で入学が決まった
昼休み杏奈は一人で構内を歩いていると譲を見かける
「ゆ、」
譲の向こう側に女の子がいた
(声……かけないほうがいいよね)
杏奈は反対向いて歩いていこうとすると譲の友達二人に会う
「杏奈ちゃん、お疲れ~」
「お疲れ様」
「まだ授業?」
「うん、午後に一つ」
「俺ら午前中で終わり、先に練習してるね、あれ、譲?」
「そうみたいだけど向こう側に女の子いるから声かけないほうがいいよ」
「ん?女の子?、あーあの子は譲の元カノだよ、何かより戻したいみたいで最近つきまとわれてるって言ってたな」
「ああ、あまり詳しくは知らないけど困ってるって言ってたから声かけて連れていこうぜ」
「じゃあ、杏奈ちゃん、授業頑張って~」
二人は手を振って譲のほうに向かった
元カノ……まあ、共学だったし、譲はかっこいいしモテるよね
あたしみたいに家と学校の往復じゃ出会いもないし
今、譲と同じ大学に通えて一緒に練習出来てるだけでもあたしは嬉しい……
4月下旬、水泳部の新入生歓迎会が行われた
部長が挨拶する
「今年は男子五名、女子四名の新入生が入ってくれました」
みんな拍手をする
女子部長も挨拶をした
「二十歳になってない人は飲まないように、それでは乾杯〜」
「乾杯~」
同じ一年の律ちゃんが話しかけてきた
前田律子(まえだりつこ)、一年生で同じ学科だったので仲良くなった
「先輩達盛り上がってるねー、大学生のノリってあんなんなんだね」
「お酒のせいかなー」
「女子の先輩達、一年男子のとこ行ってる」
「ほんとだ、お腹すいたからあたしは食べる~」
譲がトイレから戻ってきて杏奈の隣に座る
「腹へった、これ、杏奈の?」
「うん」
譲は杏奈のお箸を使って食べ始めた
「あの、お箸とお皿もらってこようか?」
「これでいい、先輩達の質問攻めに逃げてきたからまた見つかったら食えない」
杏奈は自分のお箸を使って食べる譲にドキドキした
大学生にもなって間接キスなんて意識しちゃ駄目だよね
普通に普通に、杏奈は自分に言い聞かせた
「柴田くん、先輩達に囲まれてたじゃん」
「俺だけじゃないよ」
急いで食べてたのでむせて胸をたたいた
「大丈夫?」
「杏奈の飲み物は?」
杏奈は自分の飲み物を渡す
「あー……焦った」
「急ぐからだよ」
「明日、部活ないよな?」
「うん」
「午前中にジムに行くから」
「いいよ」
「昼に飯行こうぜ」
「うん」
「あー、譲、戻ってきてるじゃん、杏奈ちゃんに隠れるなよ、こっち来いよ」
「見つかった……じゃあな」
譲は元の席に戻っていった
「杏奈、柴田くんと仲いいじゃん」
「三歳から一緒に泳いでるの、うちがスイミングスクールしててね、中学までは来てたんだけど高校は水泳部のあるとこいったから大会で見かける程度だったんだけどね、夏休みからまたうちに通いだしたの」