初恋は水中の彼
「あっ、うん」
二人が歩いて行くのを彼女はじっと見ていた
ある日杏奈は構内を歩いていると元カノに声をかけられた
「あの、少しお話いいですか?」
「何か?」
「この間はごめんなさい、一緒にいるとこ声かけてしまって、迷惑じゃなかったかしら、譲の今の彼女さん?」
「いえ、この間はジムでトレーニングした後ご飯に誘ってくれて………付き合ってはないです」
「杏奈ー」
律ちゃんが声をかけてきた
「ごめんなさい……友達に呼ばれたので」
杏奈は頭を下げて律ちゃんの方へ行く
「誰?あの子」
「譲の元カノ」
「何で杏奈に?」
「この間ご飯行ったときに会ったの、さっき呼び止められて今の彼女?って聞かれた」
「まだ柴田くんのこと好きなんだね」
「そうみたい、友達にも言ってるみたい、譲は別れたから関係ないとは言ったけど」
「もう、ご飯食べにいったんなら柴田くんと付き合えばいいのにー、じれったいなー」
「あたし今まで遊んでこなかったからよくわかんないんだよね、友達でもご飯くらい食べにいくんじゃないかなー」
「まあ、友達で行く子は確かにいるけどさ」
「いいの今、楽しいから、今度の合宿も楽しみなの(笑)」
夏休みに入ってすぐ三日間の合宿があった
ひたすら泳ぎまくった三日間だった
杏奈は譲と帰る
「合宿ハードだったな」
「うん、でも夜は修学旅行みたいで楽しかった」
「まあ男子も夜は盛り上ったけどな」
「へぇ〜どんなことで?」
「それは言えないな(笑)」
「えー気になる」
「部長同士が付き合ってるのは知ってるか?」
「知ってる、律ちゃんから聞いた」
「他にも何組かいるのは?」
「知らない、誰~?教えてよー」
譲は耳元で小声で話す
「えっ、全然わからない……部活の時、話してないよね?」
「先輩達って両立できてすごいな、俺なんて泳ぐことで精一杯なのに……」
「あたしもそうだけど少し羨ましい……律ちゃんは彼氏いるから嬉しそうに話してくれるのを見ると、応援してくれるんだってそれで頑張れるって言ってる」
「そういう考えもあるのか、俺も考えてみようかな」
「何を考えるの?」
「そうだな〜恋愛してもタイム伸びる方法?」
「そんなの、あたしだってしたいよ、タイム伸びないのはあたしの方なのに……」
「タイム伸びてこないのか?」
「うん」
「杏奈は昔から色々考え過ぎじゃないのか?ご褒美とかもらったことあるか?」
「ううん、まあ成績よかったら家族でご飯食べに行くくらいかな、そんなこと前提で泳いだことないもん」