初恋は水中の彼


「お前……家でも泳いでたんじゃねーの?」

杏奈は頷いた

「だからオーバーワークになるんだよ、今は夏休みだから練習も1日メニューなんだぞ、監督だって部活以外で泳ぐこと前提でメニュー組んでないからそれ以上すると駄目だよ」

「だって……頑張りたかったの」

涙がまた、出てくる

「俺と出掛けたい為に頑張るのは嬉しいけどそれで故障したら何もならない」

「譲のせいじゃない……あたしが自分で考えてしたことだから……譲は悪くない、ごめんなさい」

譲は杏奈の涙を手で拭う

「そんなに自分を責めるな、ご褒美は失敗だったな」

「えっ、……そんな」

杏奈の頭に手を置いた

「ご褒美じゃなくても、大会終わったらお疲れ様ってことで遊びに行こうな、タイムのことは気にしなくていいよ、さあ、帰るか、立てる?」

「うん」

二人はゆっくり歩いて帰り杏奈の家についた

「ちゃんとお母さんに状態を言って三日間は完全休養だぞ」

「わかった……ありがとう」

譲は帰っていった



(一人になったらまた泣くんだろうなー、大会でもよく泣いてたな、そういえば…俺に順位負けても悔し涙してたもんな、同じ種目じゃないのに…真面目に練習してるから悔しいんだろうな)



次の日大学の入り口で譲は律子に会う

「あっ、昨日杏奈は大丈夫だった?メールはしたけど大丈夫じゃなくてもきっと大丈夫って書くはずだから」

「うん、普通に歩いて帰ったよ、泣いてたけど、実は俺が原因なんだよな」

譲は杏奈のオーバーワークの原因を話した

「ご褒美ねー、確かにあの子遊んでないものね」

「女の子ってどうやったら頑張れるんだろう」

「私は彼がいるからさ言葉とか、態度でやっぱり嬉しいよ、一番は愛されてる時かなー」

「愛されてる?」

「やーだ、そこらへんはわかってよ(笑)」

譲の肩をたたく
譲は悟ったのか赤面する

「杏奈は部活もこの間の合宿も初めてだらけで楽しいって言ってたからね、だから遊びに行きたかったんだね」

「別に自己ベスト出さなくても夏休みだから連れていくつもりではあったんだけど……杏奈に逆に無理させた」

「なんで、一緒に帰ってるしご飯も食べにいくのにつきあわないの?柴田くんも杏奈のこと好きなんじゃないの?」

「自分も今タイム上げたくて必死になってるからそうすると杏奈のことをほったらかしにしそうで……」

「それは元カノのことを言ってるんでしょ?杏奈が不満を言うと思う?一緒に帰ってるのに今までと変わらないじゃん」

「でも、付き合えば俺も男だし、やっぱり欲が出るだろ?お前もわかれよ(笑)」

「杏奈は何も知らないお子様だから元カノとは違うよ~、一緒に帰ってくれてるだけで今でも嬉しいんじゃないの?まあ無理に付き合えとはいわないけど柴田くんにもやるべきことがあるならそれを優先するのは止めないし」

「そうだなー」

二人はプールまでたどりついた

「サンキューな、考えてみるわ」
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