OMUKAE☆DATE♪
次の日、保育園で。篠原くんも来ている。


「昨日、何かありました?」
熱血保父さんが笑顔で言った。

「いや、ユリちゃん何だかごきげんで。
しかも、今日はよくお昼寝したんで」

そう。ユリちゃんは眠いとグズるのだ。
寝つきがすごくわるい。

ところが昨日は割とあっさり眠ったらしい。
電話での会議で姉上と母上が申してござった。

「ん~、季節の変わり目ですし~。
赤ちゃんも育ち盛りですから~」
多分私、今、めっちゃ笑顔冷めてる。

言えない。

ユリちゃん連れて怪しい店に寄り道して、飲みものおごってもらったなんて。

とてもとても。

――そんなところへトイレ行ってた篠原くんが帰って来て、

「お待たせ~。ねえ、前田さん、今日もさあ……」

けっこうフツーの声で言うもんだから、
抱えてたかばんグイグイ押しつけて、わざと大声で、(牽制)

「ごっめえん‼篠原くん‼ちょっとこれ、持っててくれるかなああ!」

完全に挙動不審。

ああ、でも。

学校帰り男の子と連れ立って歩くなんて今まで無かったことだ。

しかも相手はゆるふわクール男子の篠原君。

癒され。

幸せかも。

保父さん保母さんに手を振られつつ、
制服の二人が赤ちゃん抱っこして、

帰り道。

不思議な光景。

「なあ、前田さん。今日も寄らない?卓にいの店」
改めて篠原君が言う。

「面白い人が来るらしいんだけど。
……前田さんが一緒だと心強いなと思って」


――言葉変じゃない?

「心強いって何?」
面白い人に向かって使う表現じゃないんですけど。

「とにかく、あの店のお客って強烈だから」
篠原君は苦笑いした。

予想はつく。
「店長さんがすでに強烈だもんね」

「いや、軽く上回るよ」
なぜか爽やかに言い放つ篠原君。

ユリちゃんを見る。

普通だ。

普通にしてる。

「赤ちゃん連れてて大丈夫なひと?」
強烈の質による。

「そこは安心して」
篠原君は断言した。

では、参ろうか。
楽しそうだし。

そう思って昨日と同じ道を行きかけると、後ろから声をかけられた。

「あら、前田さん?前田さんじゃない?」

振り返ると、そこにとなりのクラスの美羽根 希沙がいた。

背中に冷水を浴びたような感覚が走る。

「……美羽根さん……。
……今頃って……部活じゃないの?」
自分で声が渇くのがわかる。

「そうだけど……、今日は父の仕事の用事で……
一緒に行かなければならないの」

美羽根希沙はそう言ってすこし考えるように唇に指をあててから、

「前田さん、どうして部をやめてしまったの?」
と、訊いてきた。

その口調は、思い当たることが全く無いと感じているように聞こえた。

でも、本当にそうなのかどうかはわからない。

『何故、いまさらそれを訊く』

半年前の悪夢がよみがえる。














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