OMUKAE☆DATE♪
入学時からたーまに部活の勧誘なんか受けても、別に入りたい部なんて無かったのだ。

「うちのクラスは部活動に行ってる生徒、少なくないか?
やっぱり、青春といえばスポーツやサークルだろ。
精神力も鍛えられるし」

と、担任の先生が自ら入部キャンペーンを張り、なんか部活はいれ音頭を取り始めた。

この学校はクラス内カーストはどこのクラスもさほどでもないらしい。

ーーが、
学年内、特にクラスごとの華やかさのレベルが歴然としている。

聞けば、そんなふうになってしばらく経つという。

生徒の質に大きな偏りがあるのだ。

ウチのクラスは、やや大人しめクラス。
ーー先生は谷底に堕ちないよう、必死で扇いでいた。

とりあえず部活に入れば、先生に対して目立つ事もあるまい。

バドミントン部に入る事にした。

理由は母や姉と公園でよく遊んだから。



適当な理由で選んだ部だったが、
そこに美羽根 希沙がいたのだった。

「前田 香織さん?お隣のクラスね。

どうぞよろしく。
お互いに頑張りましょう」

何だか変な話し方をする子だな、と思っていた。

部活は最初のうちは目新しさも手伝って楽しかった。

ただ、あんまりガッツリやるのは性に合わないと言うか、適当だったのは認める。

それもまずかったかも知れない。

あるとき、美羽根 希沙と対戦することになった。

「前田さん、勝負するからには手加減しなくってよ。全力でいきましょう」

まるで古いテニス漫画のキャラクターみたいな台詞を言うと、マジでかかってきた。

でも、ノリとしては冗談だと思っていたのだ。

試合は……うん、まあ、楽しかった。


わずかの差で私の勝ち。まぐれ。
本気の美羽根 希沙にもちょっと感動したので、

「またこんなふうにやろうよ」
と、言ったのだ。

「前田さんはセンスがおありになるのね 。
次は負けませんよ」

と、彼女も大きくうなずいたので、この時点では何の問題もなかったと思う。

いや、もう始まっていたのだが、見えていなかったのだ。




それからしばらくして、
ロッカーのラケットのガットが切れていた。

まあ、知らずにどっかぶつけたんだろう。

ところが。
次の日、先輩に足を踏まれた。

「痛いんですけど」

無言。

ロッカーにゴミ。

『やっと気が付いたみたいだよ』



……そっからはもー……、
ウェアが全部裏返しにされてたたまれてるとか、

靴ヒモがほどけないほど、固結びにされてるとか、

「芸人のコントかよッ‼」

てな、細かい嫌がらせが続々登場。

そしてある日、

「ちょっと顔貸せや」
ときた。

先輩、その表現古いです。

「外れないものは貸せません」
腹に力を入れて言う。

「話があるって意味」

「話して下さい、ここで」

「あんた、空気読めや」

読んだけどちょっと遅かったんですぅ!

美羽根 希沙のお父さんは大手スポーツ用品メーカーの社長だったのだ。

妙にゆったり上品で(老けた)喋りだと思っていたら、『マジもんのお嬢様』だったわけだ。

縫製、生産工場がこの地区にもあり、親兄弟がそこで働いている生徒も多くいた。

(私の両親の仕事は関係ないので、そんな事は知らない)

美羽根 希沙は小学校の頃からバドミントンをやってて、かなりそれにかけている。と、いうことがわかってきた。

(小·中学校違うので、そんな事は知らない)

試合で私に負けた後、大言しておいて勝てなかった事を恥じ、かなりしょげ込んでいた……らしい。

そして、希沙は練習量を増やした。


「練習も不真面目な部員のまぐれ勝ちのために、無理することないのよって、再三注意してんの。聞きゃしないんだら」

「先輩、それ、
美羽根さんに対するおせっかいです」

「わかってる。

今はどちらかと言うとあんたが嫌い。

あんた、希沙の事何も知らないでしょ。
あの子すんごい努力してんのよ。

足引っ張るような事は止めてよ。

あんたとダベってる時間、練習に当てりゃいいのよ」

ああ、こいつはお嬢LOVEなのか。
他の奴らみんな見て見ぬ振りだし。

仲良くなりそうだから、
それが嫌なんだ。

この分だと顧問に相談してもムダかな。

そこで、クラスの先生に、
「なんとかしてください」
と、言ってみたのだが、

「地域の事が絡むと根深いなあ。

前田、お前バドミントンは
どうしてもやりたい事なのか?

他に興味のある活動があるなら、そっちにした方が良くないか?」

……なんですと?

部活入れと進めたのは貴方です‼

……って言いたかったけど。

この、ことなかれ主義教師め。

部活を進めたのは、やっぱり地味クラスとの評価を受けないためだけの、いい加減な対策だったのだ。

ーーこうして私は部活をやめた。





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