OMUKAE☆DATE♪
そして、そのモノホンのお嬢様、美羽根 希沙が目の前にいる。

何故にこのタイミング。

高嶺の花過ぎて、男子は誰も手を出さない美羽根 希沙が、

「前田さんのクラスの、穏やかで誠実そうで……ちょっと良いわよね……あの人」
と、言っていたのが、

ここにいる篠原 優人君なのだ。


……まずい。

超絶まずい。

バドミントン部の希沙の取り巻きさんたちが、
また私に向けて活動し始めるのを想像して、身震いした。

大体、同学年の私が先輩にコントもどきの嫌がらせを受け続けていること、

同じ部に居て気付かない?

フツー、気付かない?

ホントはコイツがけしかけているのではないかと、一時期ものすごく疑心暗鬼になった。

だが、お嬢様育ちでかなりの天然でもある。
真実はわからない。

こめかみのひきつりを押さえて
めいっぱいの笑顔を作った。

「ん~、私も家の用事が立て込んできちゃって。
こうしてお姉ちゃんの子供お迎えに行ったりとか~」

時系列無視。
完全無視。

するとあっさり、
「そう、お家の用事でなら仕方がないわね。
お互いに忙しいわね」

と、信じた。(⁉)

「バドミントン部には前田さんのような、ここぞというときに力のある人が必要なの。

戻れるようなときは、いつでも戻って下さいね」

本気か?

本気で言ってる?

「え……いや、まあ、ちょっと、無理かも」
不意打ちの心暖まる言葉にたじろいでいると、

「それは残念だわ……」
と、言い、

「うふふ。でもそうやって二人でお子様抱っこしていたら、若いご夫婦みたいよ」
そう言った。




うがッ‼

篠原君は、
「えっ。そんな、夫婦だなんて、いやぁ、だって制服なのに変だよ」
と、言って笑った。

篠原君~~!お願い~~!
そこ笑顔じゃだめえ~~‼

美羽根 希沙は首を上品に傾けると、
微笑して、

「それでは、左様なら」
と、去っていった。


ああ、



――終わった。



終わりだ。

平和な日々終了。



明日からバドミントン部先輩による、嫌がらせコント劇場再開決定。

うわああ。




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