OMUKAE☆DATE♪
「ユリちゃんのお姉さんの名前は?」
にこにこしながら聞いてきた。

「あ、えっと……、香織っていいます。
あの、私……、姉じゃなくて……、叔母です」

「香織ちゃんとユリちゃん。
いいわねえ。わたしと可憐ちゃんみたい」
夕美さんが言うと、

『ほんと、お人形さんみたい。わたしもユリちゃん、抱っこしたいなー』
と、鈴を転がすような子供の声がした。




……しゃ、しゃべった。お人形が。




そんなわけなくて……。



腹話術……。


「もー。それ、お人形のあなたが言う?」
あきれて(?)夕美さんが言う。

『あら、人間の女の子を抱っこするのって、お人形の女の子の夢なのよ?』

可憐ちゃんが言って……いるように聞こえる。

「挑戦してみてもいいけど。
抱っこしている、っていうより貼り付いている、っていう風になるわね、きっと」

『失礼ねー。こう見えても私、ユリちゃんより歳上なのよ。もう大人なんだから』

「そりゃあそうでしょうよ。大人ならおとなしく抱っこされてなさい。お人形らしく」

『つまんないのー!』

ユリちゃんは目をまん丸にして可憐ちゃんを見ていたが、意を決したように手ぐっとを伸ばした。

そこはスッとよける夕美さん。

「あう!ううあ!あうあ‼」

大興奮のユリちゃんを見て、優人君と……ヨウタ君が(つられて)大笑いしている。

「ユリちゃん、ホントにお人形がしゃべってると思ってる!」

「あら、可憐ちゃんはお話するのよ?
この子は特別なの。私に話かけてきたのよ。

……運命的な出会いだったわね」

遠くを見るような目で話す夕美さん。

タクニイさんがほほえみながら、
「これでも夕美さん、大手企業の社員さんなの。

この部屋の上の階が下請けの会社でね、依頼してた仕事を受け取りにきて……、

間違えてここに来ちゃったらしいの。
ドジっ子よね……」

「だからあ……」
ふくれる夕美さん。

「運命だって‼
可憐ちゃんに会うための間違いだったのよ。

この子に出会ってから、私の人生変わっちゃったのよ?」

元々、夕美さんは今の会社に就職する気はなく、専門的な学校に行きたかったのだという。

「実はあー、ワタシいー、映画とかあー、アニメとかもすきでえー、

声優さんとかに憧れてえー、じぶんもなりたいなああー、とかあー、思ってたわけでえー、」

「なんだかキャラ変わってますよ、夕美さん」
篠原君がッツこむ。

「昔の事思い出したら、女子高生に返っちゃって。
軽くて甘いキャラ作り込んでたの、私。

清純キャラや勝ち気キャラだと、映画好きのアニメ好きなんて合わないと思ってたのね。

どーでも良かったんだけどそんなこと。

そこまでして自分のスタンスアピールしてたのによ?

進路希望、声優って学校の書類に書いたら、
『そんなイカガワしいもの職業じゃない』
とか言われたのよ、両親揃って猛反対で。

先生も、
『夢は夢として心に持っていたら』
とか、適当なこと言うのよ。

こうなったらバイトして専門学校の学費稼いでやる‼と、思ったのね。

ところが、就職先勝手に決めちゃって、両親で結託して『普通の職業』に就かせようとしたの」

それが今居る大手企業というわけ?

「『そんなとこ絶対行かない!』
って頑張っていたんだけど。

就職難のなか面接、面接で疲れきってる友達に会って怒られてね……。

『あんたのようなワガママお嬢とはもう絶交』
って言われたの」


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