OMUKAE☆DATE♪
そして、翌日。
学校、昼の休み時間。
図書室に向かう。
本は好きだが学校の図書室はあまり使わない。
なので、どんな本があるか詳しく知らない。
大体、休み時間に学校の図書室に居るのは勉強好きのイメージがある。
……多分、私は違う……のでそう見られたくない。
長居は無用だ。
けれどまあ、学校なら就職、進学に関する本や、職業紹介に関係する本が多くあるだろう。
昨日の夜インターネットで調べてみた。
感動の人生訓が説教くさかったり、
通信教育の勧誘になっていたり、
商業化カオスに迷い込むだけだった。
しかし、職業の選択肢というのは案外、多いように見えた。
「この際、思いきりレトロなやりかたがいいのでは?」
学校の図書室行こう。
偉人伝など読んでその気になるのはよくある話だ。
なんとなく夢を見たいと思った。
それを忘れないうちに、何らかの行動をしておきたいというのもある。
さいわい、今日は図書室にいる生徒はすくなかった。
さすが図書室、静かだ。
校内の喧騒が遠く聞こえる。
とりあえず、本棚の上から下へじっくり見ながら室内をゆるゆると……。
ぽんっ。
肩を軽く叩かれて振り返る。
美羽根 希沙が居た。
「んぎゃごっ!」
驚いたので変な声が出た。
「しーっ。図書室……!」
希沙は人さし指をくちびるにあてて、
……少し笑っている。
「初めてお逢いしますね、ここでは。
……前田さんは何を読むの?」
美羽根 希沙は同級生だが、先輩に訊かれているような気分になる。
「あ、えっと、その……」
私が何のためにここへ来ているか。
そんなことは、この際どーでもいい。
私は昨日、希沙に会った時のやり取りを目まぐるしく思い出した。
そう、誤解……、何としても誤解を解かなければ。
私と篠原君は付き合ってません。
「あっ、えっと、どんな本があるのかな、って……、
あの、それより昨日の事なんだけど。あの、ですね」
うわー、どう説明しよ。
希沙は私の前にたたずんで静かに話を聴いていた。
「あっ、あのね、美羽根さん。
私、姉の都合で保育園に姪っ子迎えに行かなくちゃならなくて、
そしたらた・ま・た・ま、篠原君も同じような用件で、ぐ・う・ぜ・んお迎えに来てて、
帰る方向が同じなのでな・ん・と・な・く一緒に居ただけな訳で……」
話を聴いていた美羽根希沙が一瞬、上目遣いになった気がした。
「それで?」
すごく優しい笑顔になる。
こ、怖っ。
「私と篠原くんとは任命されたお迎え要員としてし・か・た・な・く一緒に帰っている訳で……つ、つまり、つ……
……付き合ってるとかじゃないの」
うぅ。言った。言ったよ。
だってホントの事だもん。
うぅ~。
美羽根 希沙はキョトンとした顔になり、
「何か……よく解りませんが……少し……思い違いがあるような気が……します」
と、言った。そして、
「霧谷 貴史さんてご存じよね?」
霧谷貴史。……現生徒会長だ。
知らないも何も、
父はけっこう有名な小説作家で、母は舞台女優。
兄はTVドラマにも出演する俳優で、本人も芸能界からのお誘いが絶えないらしい。
親類にもTVプロデューサーやCMプランナーが多数いる華麗なる芸能一族の……って?
……?
「先日、交際を申し込まれましたの」
な……。
なな……な……。
なんと……。
「それで、お受けする事にしました」
――なんとっ?!
希沙の表情は静かだ。
そして言う。
「けれど、あの方はなかなか人望あるかたでしょ?
なので、かげながら慕っている女子生徒もいると思うの。
学生の本分は学問ですから。
失恋に落胆して成績に影響してしまうと気の毒ですし、
わたくしも恨みをかってしまいます。
この事は何分にもご内密に、ということで………」
「そ、それは……」
お、おめでとうございました……。
美羽根 希沙は、首を傾けながら、
「お願いしますね。
お互い人気の高い方がお相手になると、周囲に気を使って大変ですね……」
と、微笑みながら言った。
肩の力が抜ける。そうしてはじめて肩に力が入っていた事を知った。
なるほど。
お姫様には王子様がお似合いという事か。
そうだろう、そうだろう。
でもちょっとだけ腑に落ちない。
『いいな……、』って言ってたじゃないい~、篠原君の事ぉ~。
……乗り換えたな……?
乗り換えたんだな?!白馬の王子様に。
「何か良い本を見つけたら、教えて下さいね」
そう言って、美羽根希沙はノートや教科書などを置いていた席へ戻って行った。
午後の授業のあいだ中、最新情報である秘密の交際のことが、頭を離れなかった。
霧谷先輩と美羽根 希沙はデートなどするのだろうか。
あの二人はどんな会話をするのだろう。
ちょっと想像できない……。
学校、昼の休み時間。
図書室に向かう。
本は好きだが学校の図書室はあまり使わない。
なので、どんな本があるか詳しく知らない。
大体、休み時間に学校の図書室に居るのは勉強好きのイメージがある。
……多分、私は違う……のでそう見られたくない。
長居は無用だ。
けれどまあ、学校なら就職、進学に関する本や、職業紹介に関係する本が多くあるだろう。
昨日の夜インターネットで調べてみた。
感動の人生訓が説教くさかったり、
通信教育の勧誘になっていたり、
商業化カオスに迷い込むだけだった。
しかし、職業の選択肢というのは案外、多いように見えた。
「この際、思いきりレトロなやりかたがいいのでは?」
学校の図書室行こう。
偉人伝など読んでその気になるのはよくある話だ。
なんとなく夢を見たいと思った。
それを忘れないうちに、何らかの行動をしておきたいというのもある。
さいわい、今日は図書室にいる生徒はすくなかった。
さすが図書室、静かだ。
校内の喧騒が遠く聞こえる。
とりあえず、本棚の上から下へじっくり見ながら室内をゆるゆると……。
ぽんっ。
肩を軽く叩かれて振り返る。
美羽根 希沙が居た。
「んぎゃごっ!」
驚いたので変な声が出た。
「しーっ。図書室……!」
希沙は人さし指をくちびるにあてて、
……少し笑っている。
「初めてお逢いしますね、ここでは。
……前田さんは何を読むの?」
美羽根 希沙は同級生だが、先輩に訊かれているような気分になる。
「あ、えっと、その……」
私が何のためにここへ来ているか。
そんなことは、この際どーでもいい。
私は昨日、希沙に会った時のやり取りを目まぐるしく思い出した。
そう、誤解……、何としても誤解を解かなければ。
私と篠原君は付き合ってません。
「あっ、えっと、どんな本があるのかな、って……、
あの、それより昨日の事なんだけど。あの、ですね」
うわー、どう説明しよ。
希沙は私の前にたたずんで静かに話を聴いていた。
「あっ、あのね、美羽根さん。
私、姉の都合で保育園に姪っ子迎えに行かなくちゃならなくて、
そしたらた・ま・た・ま、篠原君も同じような用件で、ぐ・う・ぜ・んお迎えに来てて、
帰る方向が同じなのでな・ん・と・な・く一緒に居ただけな訳で……」
話を聴いていた美羽根希沙が一瞬、上目遣いになった気がした。
「それで?」
すごく優しい笑顔になる。
こ、怖っ。
「私と篠原くんとは任命されたお迎え要員としてし・か・た・な・く一緒に帰っている訳で……つ、つまり、つ……
……付き合ってるとかじゃないの」
うぅ。言った。言ったよ。
だってホントの事だもん。
うぅ~。
美羽根 希沙はキョトンとした顔になり、
「何か……よく解りませんが……少し……思い違いがあるような気が……します」
と、言った。そして、
「霧谷 貴史さんてご存じよね?」
霧谷貴史。……現生徒会長だ。
知らないも何も、
父はけっこう有名な小説作家で、母は舞台女優。
兄はTVドラマにも出演する俳優で、本人も芸能界からのお誘いが絶えないらしい。
親類にもTVプロデューサーやCMプランナーが多数いる華麗なる芸能一族の……って?
……?
「先日、交際を申し込まれましたの」
な……。
なな……な……。
なんと……。
「それで、お受けする事にしました」
――なんとっ?!
希沙の表情は静かだ。
そして言う。
「けれど、あの方はなかなか人望あるかたでしょ?
なので、かげながら慕っている女子生徒もいると思うの。
学生の本分は学問ですから。
失恋に落胆して成績に影響してしまうと気の毒ですし、
わたくしも恨みをかってしまいます。
この事は何分にもご内密に、ということで………」
「そ、それは……」
お、おめでとうございました……。
美羽根 希沙は、首を傾けながら、
「お願いしますね。
お互い人気の高い方がお相手になると、周囲に気を使って大変ですね……」
と、微笑みながら言った。
肩の力が抜ける。そうしてはじめて肩に力が入っていた事を知った。
なるほど。
お姫様には王子様がお似合いという事か。
そうだろう、そうだろう。
でもちょっとだけ腑に落ちない。
『いいな……、』って言ってたじゃないい~、篠原君の事ぉ~。
……乗り換えたな……?
乗り換えたんだな?!白馬の王子様に。
「何か良い本を見つけたら、教えて下さいね」
そう言って、美羽根希沙はノートや教科書などを置いていた席へ戻って行った。
午後の授業のあいだ中、最新情報である秘密の交際のことが、頭を離れなかった。
霧谷先輩と美羽根 希沙はデートなどするのだろうか。
あの二人はどんな会話をするのだろう。
ちょっと想像できない……。