OMUKAE☆DATE♪
そして放課後。

実は鞄の中にユリちゃんのお気に入りのニギニギ(小さなヌイグルミ)が入っている。

母に渡されるはずだったそれは、没収される危険性がある高校生女子のかばんの中に。

(今日、所持品検査が無くて良かった。
キーホルダー以外は禁止なのだ)

こんな物であのユリちゃんが騙される訳がない。

泣く。

泣くに決まっている。

迎えに来たのが(子供経験値の低い)伯母だと知って大泣きするに決まっている。

かばんが重い。

部活に向かう生徒たちの波とすれ違い、追い越されながら門を出る。

近くにあるコンビニで袋入りのマシュマロを買った。

ヨシっ。
いくぞっ。

準備万端なせいか足どりは少し軽くなる。


保育園に着くとインターホンに向かい名前を告げ、門を入った所の詰所で学生証を見せた。

廊下を歩いて行くと、園児たちのいる部屋の入口にもう一人いる。

その人も子供を迎えに来たのだろう。

……が、近付くと……、





同じ学校の制服の、

同学年の男子だ。





……しかも、同じクラスの篠原優人くん。

なんでここに?

座り込んで赤ちゃんに話しかけてる。

その赤ちゃんは……、



ユリちゃんだ。

篠原君は手に黄色の……お風呂に浮かべるおもちゃのアヒルを持っていた。

「ねえ、ユリちゃん。これってなんの鳥に見える?」

ユリちゃんは篠原君とアヒルを代わるがわる見て、

「あー‼」

「そうよね?アヒルよね⁉でもさあ、コレってこの色どーうお見てもヒヨコじゃなアい?

子供のおもちゃだからってさあ、適当な事言ってなアい?

そういうところにワタシは日本の幼児教育の問題点を感じる訳なのよ」

「あー……?」

「ねえ、ユリちゃんもそう思わなアい?」


一瞬笑いそうになったがこらえた。
そして、

「うおっほん!」
咳払い。

振り返る篠原君。

「えっ⁉えっ‼あ……何で?前田……さん?何でここに?」
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