OMUKAE☆DATE♪
それから、みんなでワイワイ言いながらの食事は楽しかった。

食事が終わってから、食休み。

透さんはお姉ちゃんと目配せしてから、私に向き直り、

「今回、特に迷惑かけちゃった香織ちゃんに、二人からお礼を贈ります」
と、言った。

?……??

お姉ちゃんが透さんに、リボンのかかった小さな箱を渡す。

そして、透さんが私に。

「開けてみて」

なんだろう。リボンを外し、包みをといて箱を開けるとエナメルの花が一輪、鎮座していた。

白い花。蘭。蘭のブローチ。

「ーー綺麗。いいの?」
嬉しいけどつい、言ってしまった。

かなり凝った造りで、良いものだと思う。

姉はふふふと笑い、

「実は前々から行ってみたかったアクセサリー·ショップだったの。

入るのに良い口実ができたなって。

これ、透さんが選んだのよ。

私は、香織にはスミレのブローチが合うと思ったけど。

……ほら、香織の『香』の字って、なんとなくスミレに似てるじゃない?

ところが透さんがね……」

透さんが頷いて、

「知り合いに温室で春蘭を育てている人がいるんだ。

一度見せてもらったんだけど、温室のなかはすごくいい香りで。

『香り』って言えば、やっぱり蘭だろうと」

お姉ちゃんは少しふくれて、
「……このひとも言いだしたら聞かない」

そう、お姉ちゃんもガンコだけど、透さんはその上を行く。

二人が軽くケンカまでして選んだブローチを見た。

お迎えの終了が早まった事で、一瞬でも信用されてないのでは、と思った自分を恥じる。

透さんは、

「いや〜、女の子にプレゼント選ぶ機会なんて、この頃なかなか無いし。

これはこれで楽しかったかな、と」

お姉ちゃんはまたふくれて、

「バイトの女の子の、バレンタインの義理チョコ返し、あたしに選ばせるクセにどのクチで言う?!」

それに対して、

「だって、勝手に買ったら怒るだろー?」

透さん、本気の言い訳。

「はいはい、ごちそーさま。

香織、良かったわね、いいもの頂いて。
またみんなで会いましょう。

ステージ、盛り上がると良いわね」

母の締めの一言が決まって、お開きとなった。

「むにゅ〜。ユリちゃん、また遊ぼうね〜」

ほっぺつついて言ったんだけど。

ユリちゃんはしれっとして、何とも思っていないみたいだった。

「ありがとうございます。

本当に、今日はすごくいい日だ。
楽しかったし、いいものもらったし」

透さんとお姉ちゃんにそう言うと、二人共顔を見合わせて笑った。








仁科家が帰り、静かになった家の自分の部屋。

バッグの外側のポケットから、昼間にタクニイさんからもらったスカーフを取り出した。

本でシワにならないように、気をつけて持って帰ったスカーフ。


頭に被る。

肩に掛ける。

首に巻く。


うっすら控えめな花柄のプリントが乙女チックだが。

清純派の気配。
今、持っている服のどれに合うだろう。

どちらかと言えば、ガーリーでもややポップ系寄りな服を選びがちな私。

新境地だな。(照)

そして蘭のブローチ。

スカーフに留めてみる。


合う。

……似合うな。

こんな偶然ある?


最初からコーディネートされてたみたい。

つい、ドアを振り返る。

一人ファッションショー。

バカっぽくて変だ。(照)

もう一度鏡をみる。

このスカーフ、縁だけちょっとの幅、ライトグリーンに染めてみてもいいかも。

でも、グラデーション上手くいくかな。
ビーズを留め付けてもいいかも。

考えるだけでも楽しい。











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