OMUKAE☆DATE♪
篠原くんに案内されて、整然と並ぶ一室の前に立つ。

扉に凝った造りの小さな額が掛かっている。

それが看板のようだ。花文字書体。

読めない。

一階の店と違って住居部分は古く、さびれた雰囲気だ。

なのに、こんなところで店を開いているらしい。

あやしい。

「何て書いてあるの?お店の名前?」

「卓にいに言われた。自分で調べろって」

「調べたの?……で?」

「いや……すっかり忘れてた。フランス語らしいんだけど」

何なの?



篠原くんがチャイムを押すと、

「いらっしゃいませ」
声がして、中から青年が顔を出した。

金髪のショートボブに、黒縁メガネ。服は洋食店の給仕のようなパリッとしたで立ちだ。

白のシャツブラウスに蝶ネクタイ、黒のベストに黒のロングエプロン。

笑顔になって言う。
「あ、ぼんだ。おかえりなさい。

店長お~、ぼんと優人くんですう~、
お友達も一緒ですう~」

「ねえ。その、ぼんていうのやめてよ。ヨウタはたしかに卓にいの息子だけど……。ヤクザみたい」
篠原くんが言うと、

金髪の青年は、
「あの人の、どの辺がカタギなんです?

いたいけない男子高校生を舎弟にして、パシリに使いたい放題。

店番しながら、自分は昼から酒飲んでるんですよ?
ぼんはヤクザの息子です」

「卓にいにきびしいんだ。この人」
篠原君はフォローしたが、フォローになっていない。

あやしい。

あやしすぎる。

「さ、どうぞ」

金髪の青年に促されて中に入る。

入口は暗い。

ワンルームのようだ。

奥に窓がある。

窓には、孔雀の柄のチュールレースのカーテンがかけられていた。
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