OMUKAE☆DATE♪
中に入って少し……驚いた。

赤と黒のバラの壁紙。香水の瓶、カットグラス、
皮張りのトランクケース。宝石箱。
鏡張りの食器棚。

ゴブラン織にフリンジがついたソファ布。
それが掛けてあるソファは、背もたれに向日葵の彫刻があり、猫足の造り。

座っているのはアンティークのビスクドールと、作家物らしき創作人形。

生きて眠っているような猫の縫いぐるみ。
陶器のウサギ。

クラシカルで豪奢なものが、所狭しと並べられていた。

主に多いものは壁とラックにあるフリルのたくさんついたドレスと……、

……人形だ。

見るからに古くて由緒ありげなものから、

最近のナイロン頭髪で、アニメ絵の眼が描かれたもの、

作家職人の手で造られた感じのする、アクの強い表情を持ったものまで、

渾然一体となりひとつの雰囲気を作っていた。


ユリちゃんを見ると、完全に圧倒されて目がまんまるになっている。

泣きだすのではと思ったが、さいわいその気配はない。

ヨウタくんは勝手知ったりなのでかえって元気だった。

「おかえりなさい。そして、ようこそ」

長椅子に身を横たえていた……女性……ではない……、細身のドレスを着た男性がゆっくりと起き上がり、両手を伸ばした。

この人がタクニイさん?

篠原くんがヨウタくんを連れていく。

タクニイ……さんは、
「ん~、おかえり陽太。……そちらのかわいいお嬢さんは……彼女さんかしら?」
と、言った。

篠原くんははっとして赤くなり、
「あ、そんな。彼女だなんて。今日は偶然、保育園で……」
あわてて説明しようとすると、

「ん~、さすがワタシの子。目は確かよね~」
左手でヨウタくんを抱えたまま、右手で私がだっこしてる、ユリちゃんのほほをなでなでした。

「そっちかよ!」
ッツコむ篠原くん。

そうだ、そっちかよ。

タクニイさんは笑って、
「うふふ~。お約束~。
それと、疲れたでしょ?

赤ちゃんをこちらに座らせなさいな」
と、椅子のひとつからお人形を退けて、クッションを敷いた。

すごく手際が良い。
こういう事は、よくある事なのかも知れない。

普段、どんなお客さんが来るのだろう。
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