素肌に蜜とジョウネツ
エレベーターの中での会話はそれだけで、私の部屋の前に着いてしまう。
部屋に入る前に、せめて、お礼は言わなきゃ……
そうは思いながらも、言えなくて、時間を稼ぐように鞄の中から鍵を探す。
それでも言葉が出てくれなくて、取り出した鍵を鍵穴に差し込んだ。
と、その瞬間、
「おい」
何かに気付いた様に、私の手を掴んだ高輪マネージャー。
「掴まれた痕……残っているじゃないか」
「え……」
上島さんに掴まれた私の手首には痕が残っていた。
「痛いだろ……?」
そう言って、優しく、高輪マネージャーは私の手を取る。
痛い。痛いよ、勿論……
でも、痕が残る手首の痛さよりも、
私の心が痛い。