素肌に蜜とジョウネツ

お礼さえも言ってないのに、いきなり“構わないで”なんて、失礼すぎる。

そんな事はわかっているけど、これ以上、一緒にいたら、ただの上司としてなんて、ますます見れなくなる。


“好き”


をやめられなくなるよ。

やめられなくなるばかりか、想いが強くなってしまう。


「もう……夕食も作りません……」


高輪マネージャーの瞳を見ずに、そう伝える。


「何で、急に?」


高輪マネージャーの低い声。

何でって、そんなの決まってる。


「彼女に―…悪いじゃないですか」


口から出た言葉は建前。

本音は、その理由が一番じゃない。

ただ、自分自身が辛いから。

彼女がいる人への恋なんて、辛い。愛されている女性が他にいるって、わかっていて必要以上に接するなんて辛い。


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