素肌に蜜とジョウネツ

頑張れば、想い続ければ、何時か振り向いてくれるかもしれない、

なんて前向きに考えられないのは、何年も身体の関係を続けて、結局、一番で唯一の“オンナ”になれなかった、虚しさと惨めさを知っているからだと思う。

恋をしてしまった相手は同じ職場で燐人。

凌一と違って、接点が多すぎる。

引き返すなら出来るだけ早いほうがいい。


「彼女?」

「はい……だから、今度から夕食は彼女にお願いして下さい」


いっそのこと、

“ああ、何だ。君も知っていたのか”

って、舞川マネージャーの事を認めてくれたら、楽なのかもしれない。

“彼女は君と違って、大人の女だ”

とか、何とか言って、意地悪くノロケてくれたらいいのかもしれない。

もう、この際、早いうちに傷つくだけ傷ついて、想いに歯止めをかけたい。

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