【短編】きみの甘くない魔法



「……ごめん、忘れて。
私先に帰るね。ばいばい」



驚いた顔をして、固まっている彼にそう告げて学校を後にする。



……きっともう、彼は家庭科室に来ない。


もうお菓子を作る必要もなくて、私と彼との接点はなくなって。

今まで通りの毎日が戻ってくるはずだ。



私が飲み込んだ毒だってだんだん薄れて、きみのことなんて綺麗な思い出に変わるはずだ。



……なのにどうして、今もこんなに苦しいんだろう。




< 11 / 14 >

この作品をシェア

pagetop