【短編】きみの甘くない魔法
「……ごめん、忘れて。
私先に帰るね。ばいばい」
驚いた顔をして、固まっている彼にそう告げて学校を後にする。
……きっともう、彼は家庭科室に来ない。
もうお菓子を作る必要もなくて、私と彼との接点はなくなって。
今まで通りの毎日が戻ってくるはずだ。
私が飲み込んだ毒だってだんだん薄れて、きみのことなんて綺麗な思い出に変わるはずだ。
……なのにどうして、今もこんなに苦しいんだろう。