【短編】きみの甘くない魔法






「……あれ、空いてる?」



あれから1週間が経ったけれど、私の日常はなにも変わらなくて。

ただ家庭科室に、きみが来なくなっただけだ。



いつも通り、家庭科室の扉に鍵を差し込むと、回るはずの方向に鍵が回らない。

不思議に思って扉を開けたら、もう鍵は空いていたらしい。




「……え」




ドアを開けた瞬間、ふわり、と広がる甘い香り。


調理台の上には、お砂糖のかかったシフォンケーキ、チョコチップの入ったカップケーキ、イチゴが溢れるくらい乗ったショートケーキ、それから甘い匂いのガトーショコラ。



そして、やさしい顔で笑うコウ。




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