【短編】きみの甘くない魔法
「おーっ、できた!
すげえ!美味しそう!」
にこにこしながら完成した甘さ控えめのガトーショコラをラッピングするコウ。
私はその笑顔を見て目を細める。
「先輩の部活待ち伏せして帰りに渡すわ。
ありがとうな、汐田!」
そう言って元気に家庭科室を出て行く彼。
ついでに私にもと置いていったガトーショコラをひとくちかじる。
「……全然甘くない」
コウの好きな先輩は吹奏楽部らしい。
きっともうすぐ部活が終わって、彼のガトーショコラを受け取って、それから一緒に帰るんだろう。
俺の片想いだよ、なんて彼は寂しそうに笑っていたけれど、彼女の方は一体どう思っているのだろうか。