【短編】きみの甘くない魔法
……ねえ、コウ。
わたし、甘いお菓子の方がすきなの。
お砂糖はもっとたくさん入れたいし、ダークチョコレートよりもホワイトチョコレートが好きだし、生クリームもいっぱい使いたいの。
ガトーショコラの苦味が、これは私のためのお菓子じゃない、先輩のために作られたものなのだということを痛いほど教えてくれる。
きみの切なそうな笑顔は、いつだってこっちを振り向かない。
甘くないお菓子を食べるたびに、私の身体の中にはドロドロした、重たい感情が溜まっていく。
積もりに積もったそれは今にも溢れてしまいそうで、今にもきみを引き止めてしまいそうで。
これはきっと、きみがこのお菓子に入れた毒。